2025
1
May

撮影機材・道具・その他(Equipment・Tools)

ティルトシフトレンズって?

ティルトシフトレンズ

ィルトシフトレンズとはレンズ部を可動させることが可能なレンズのことで、ティルト機能とシフト機能を持っています。画像と共にそれぞれがどういった機能なのかを見て頂くと、このレンズが何なのかを分かって頂けると思います。

シフト

フトとは英語で位置を移動すると言う意味で、カメラにおいてはレンズと被写体とを平行に保ったままピント面(レンズ)を移動させることを言います。レンズを上にすることをライズ、下にすることをフォール、横方向への移動をシフトと呼びますが135判の場合は全ての平行移動をシフトと一括りにすることが一般的です。

ノの形をそのままカメラで捉える場合にはカメラと対象物を平行に同じ角度で写す(カメラを傾けず水平垂直を保つ)必要が有ります。しかし建物のような人の背丈を遥かに凌ぐようなものでは、人の目線の位置からカメラを構えた場合に水平垂直を保ったままでは収まりません。そのため普通はフレームに収まるようにカメラを上に向け撮りますが、そうすると遠近感が強調され上すぼまりに写ってしまいます。それでは正しい形のままでは無くなってしまうのでカメラを傾けず水平垂直を保ったままフレームに収まる高さまで持ち上げるか、そのまま後ろに下がって全体が写る位置まで行くしかありません。しかしそんなこと普通はできないので、カメラを持ちあげたり自分が下がるのではなくレンズを平行に持ち上げる(ライズ)ことでカメラは水平垂直を保ったまま、建物の形をそのままにカメラにピッタリと写し込むことをできるようにします。そういったレンズを平行に上下させる機構を組み込んだものがシフトレンズで、レンズを上下(左右)に平行に動かすことをシフト操作と言います。

シフトなし シフトあり

じレンズでシフトしたものとカメラを上向きに見上げて撮ったものを比較すると、見え方の違いがよく分かります。見上げて撮ったものは人の眼と同様に建物を見上げるので見え方としては自然ですが、建物として見た時は上すぼまりになり不自然さがあります。それに対しシフトして撮ったものは建物の外壁がきちんと垂直になっていて建築物としては自然です。
※ライズした方は左側のマンションは実物は角の角度は90°なはずですが、エッジが90°を越えてしまっています。本来は形が変わってしまうのを防ぐためにここまで極端にシフトはしません。これを防ぐにはカメラをもっと高い位置に置いてシフト量を減らすか、建物の角部分ではなく面部分から撮るようにするなどします。この画像でも右側のマンションは、左のマンションに比べると正対しているので、角部分の尖り方に違和感を感じず自然に見えます。


平垂直を保ったままシフト量0で撮ったものと、12mmほど目一杯ライズしたものです。ここまで写る範囲が異なると、シフトレンズの凄さの一端が判るのではないでしょうか。


フトした時のレンズの動きです。レンズとカメラは平行なままレンズ(レンズ側に三脚座が有る場合はカメラ)が上下に可動します。

ースの付いたものを画像補正で水平に戻す事もできますが、画像補正の場合は補正した分だけ写る範囲が狭くなってしまい、またどれだけ狭くなるかは補正しないと分からないので、撮った後でいざ編集すると見切れるなんて言う洒落にならない事態が起きる可能性や、元画像をトリミングするので画素数が小さくなってしまいます。また上すぼまりなギュッと圧縮されて写っている画像を引き延ばすので、若干であれば問題ありませんが、パースの付き過ぎた画像では引き延ばし量が多くなってしまい画像に無理が生じます。さらに今であれば画像補正よって欠けてしまった周辺部をAIによって簡単に書き足すことも出来ますが、シンプルな空や水面であればともかく、複雑なものが写っている場合には上手く補完できないこともあります。なので大量に建物を自然な形で撮る場合には最初からシフトレンズで撮る方が楽です。
しもPhotoshopでパースの付いた画像を補正する場合は広めに撮ってトリミングしてもケラレてしまわないようにするか、カメラを水平垂直を保ったまま全体が写る範囲まで引いてからトリミングすることでも対応できます。

created by Rinker
¥197,804 (2025/05/17 13:27:43時点 楽天市場調べ-詳細)

コーのカメラには構図微調整機能が備わっておりシフト量にして1mmの補正がカメラ内で可能になっています。ニコンのシフトレンズの場合は24,45,85mmで11mm、19mmで12mmのシフト量を持つので、1mmではほんの少し、名前の通り構図微調整程度ですがこれも立派なシフト機能です。

フトレンズはレンズを平行に上下(左右)に動かすことができるので、レンズ位置を動かして撮影した複数の画像を合成することで、本来のレンズ画角よりも広い範囲を写すパノラマ撮影もできます。特にレンズを水平位置で固定しシフトした場合はレンズをあおった時のようなパースがつかないので、画角的には超広角でありながらも自然な仕上がりになります。
メラの向きを縦位置でシフトすればよりパノラマ写真として細長いものになりますし、横位置方向にシフトさせれば横長のパノラマ写真になります。

た複数の画像を繋いでいるため画素数が大きくなります。

常の1枚の写真をシフトして撮る場合には問題ありませんが、複数枚を繋ぐ場合はレンズ側を固定しカメラ側を動かさないと収差によって繋げない(繋げるが繋ぎ目が不自然になる)ため、レンズ側に三脚座を取り付けて撮ります。シュナイダーや富士フィルムのシフトレンズは元々レンズ側に三脚座が備わっているので問題ありませんが、ニコンやキヤノンのシフトレンズは三脚座が無いので、サードパーティーの三脚座を取り付けます。が…元々レンズでカメラを支える設計では無いので、カメラが軽くないとシフト部分が摩耗して壊れ易くなります。特にニコンもキヤノンもミラーレスになりマウントが変わったので、マウントアダプターとカメラを支えるので、明らかに負荷が掛かっているのが分かります。

created by Rinker
¥11,104 (2025/05/17 13:27:43時点 楽天市場調べ-詳細)
iShoot Nikon Z 24-120mm F4 S

脚座の無いレンズ用に三脚座を出してくれているサードパーティー。金属製でしっかりとしているうえ寸法も正確です。ロック機構はノブを引っ張ったうえでスライドしないと外れないので間違って外れてしまうこともありません。三脚座の部分はアルカスイス互換になっているので、純正で三脚座が付いているレンズの脚の部分の交換用や、三脚座が欲しかった24-200や28-400などの高倍率ズーム用も用意されています。

 

ティルト

ィルトとは英語で傾けると言う意味で、カメラにおいてはレンズを傾けることでピント面(光軸)をコントロールすることを言います。水平方向へとレンズを傾けることをティルト、垂直方向はスイングと言いますが、シフトと同じく135判の場合はどちらもティルトと呼ぶことが一般的です。
シフト操作の場合はピント面はセンサーと平行なまま上下左右にレンズが動くので、レンズが動くことによって映る範囲も変わるんだなと理解し易いと思いますが、ティルトはピント面を動かすと言う文字だけ見てもどういうことか想像し難いかと思います。
際にテーブルの上に置いたマジックを85mmのレンズで撮影してみます。

メラに対して斜めに置いたマジックを、絞りはf4でピント位置はRの位置に合わせて撮影しています。ピントはカメラ(センサー)に対して平行に面で合うので、ピント面を斜めに横切る被写体においてはピント範囲から外れてしまう部分が出ます。

ちらも絞りは同じくf4ですがRKくらいしの位置にしか合っていなかったピントがRKER油性マーカーの文字に合うようになりました。もう1段絞るか厳密にピント面を平行にすればマジック全体にピントが合います。


干フレーム位置が変わってしまいましたがスライダーで見比べてみてください。
絞りを変えずレンズをティルトすることでピント面がマジックと並行になりピントの合う範囲が広がりました。

黄色実線がそのままf4で撮ったピント面。点線がティルトしてピント面を傾けたもの。灰色がティルトせず絞った時のピント範囲のイメージ。

じ絞りf4でもピントの合う範囲がなぜ異なるかと言うと、ピントは面でなおかつセンサーに対して平行で合うので、通常ではセンサーに対して斜めのマジックは一部分にしかピント面が来ません。そこでレンズを傾けてあげることでピント面をマジックと平行にします。そういったレンズ振ることでピント面を調整できる機構を組み込んだレンズがティルトレンズで、レンズを左右に振ることをティルト操作と言います。
レンズを傾けることでピント範囲を移動させているのであって、絞りを調整することでピント範囲を広げているわけではないので、今度はピント範囲外になってしまった部分はボケてしまいます。ここが絞って撮影した時と異なる点ですが、被写体に対してはパンフォーカスなので問題はありません。

りは大きい(開ける)程にピント範囲が狭く、小さい(絞る)程にピント範囲が広がります。と言うことは無理にf4で撮らずともf32まで目一杯絞ってしまえばピント範囲が拡大しマジックの全体に合います。しかしレンズには絞りを絞り過ぎると回折ボケ(小絞りボケ)と言って、絞っているのに逆にピントが合わないボケているような現象が発生します。回折ボケは対象が細かくなる風景撮影のようなもので顕著になる(展望台などでf22まで絞った画像を見ると判りますが、絞り過ぎたことで遠景の家などがボヤっとしています)ので、こう言った物撮りで画像を縮小してしまう場合にはある程度は無視できますが、大きな画像のまま使用したい場合などは回折ボケを防ぐために極端に絞り込むことはできません。また絞り過ぎると今度はストロボのパワーが足りないとか言う問題も起きるので、ある程度の絞りで済ませたいところです。

ィルトした時のレンズの動きです。弧を描くようにレンズ(レンズ側に三脚座が有る場合はカメラ)が可動します。
ニチュア風撮影は逆方向にティルト操作をすることで撮ることができます。上からみたマジックの画像で言うと、レンズを左ではなく右にティルトするとピントの合う範囲が文字のR付近のみになり、その前後のピント面以外は大きくボケるので、あたかもミニチュアを撮影したかのようになります。


ンズとマジックを平行にすればティルト操作は要らないんじゃ?と思った方は正解です。ピントは面で合うので被写体とピント面(センサー)を平行にすればf4でもピントはしっかりマジック全部に合います。
真正面から撮るような撮り方をする場合はこれでも問題はありませんが、モノの3面を見せて撮りたい場合などは、レンズに対して対象が斜めに配置されるので、ピント面を傾けてあげることで回折ボケを防ぎつつ、撮りたいものにピントを合わせてあげることができます。

created by Rinker
¥3,740 (2025/05/17 13:33:55時点 楽天市場調べ-詳細)

品リンクに良い感じのがあっあたので。細長い商品を撮った写真は見栄えのために商品が斜めになっていることが多いですよね。この場合だと通常のレンズで全体にピントを合わせる場合は商品を真横から撮るしかありませんが、それでは電車の形がよくわかりません。なので3面が見えるようなアングルから撮りますが、普通に撮ってもピントは面なので、電車の先にピントを合わせれば後ろはボケてしまいます。それを防ぐためにある程度絞ってティルトすることで商品全面にしっかりとピントを合わせることができます。
※今は被写界深度合成をしたり、見かけ上被写界深度の深いセンサーサイズの小さいカメラで撮るなど、ティルトレンズを使用する以外にも3面を見せてパンフォーカスにする方法はあるので、このイメージがティルトレンズを使用したものかは判りません。ティルトの説明をしている最中ですが、仕上がりさえ問題無ければ手法は何であれ問題ありません。

created by Rinker
¥264,827 (2025/05/16 17:15:07時点 楽天市場調べ-詳細)

メラ内で深度合成ができる凄いカメラ。現在販売されているカメラの中には深度合成できる機能を持ったものがあるので、そういったカメラでは通常のレンズであってもワンタッチでピント範囲の広い写真を撮ることができます。ただ合成には数枚から数百枚の撮影をするので、その間物撮りであればストロボが延々と発光しますし、風景であれば風による対象物の動きや動態物などで合成できない可能性もあります。ティルト位置を調整する手間は有りますが1枚で済むティルト撮影とどちらが良いかは何とも言えません。


度はマジックの前後にエネループを置いてみました。f22まで絞っているのでマジック以外にもエネループにも何となくピントが来ていますね。パンフォーカスとはまだ言えませんが、比較的ピント面は広くなっています。

ほどと同じ絞りはf4です。エネループはイイ感じにボケましたがピント面を横切るので、マジックもピントが一部にしか合わなくなってしまいました。

こで同じように絞りはそのままレンズをティルトしてあげます。そうするとピント面が傾き、エネループのボケはそのままマジックにだけピントが合うようになりました。絞った時と違い、対象物はパンフォーカスになってもピント範囲面から外れたものはそのままボケています。これがティルト操作によるピント面コントロールです。

回取り上げた用途以外にもシフト機能は鏡やガラスなど反射してしまうものを正対して撮る場合や、モデルさんの足を長くスラッと魅せる場合、ティルト機能はモデルさんだけにピントを合わせ周囲をフワッとさせる場合、逆ティルトで被写体をミニチュア風に見せる場合など、使用者によってさまざまな撮り方があります。
焦点レンズとしては暗い、暗いのに高い、なんかゴツイ、しかもAFできない。と言った摩訶不思議なレンズですが、機能を知ると凄いレンズだと言うことが分かるのではないでしょうか。

created by Rinker
¥3,520 (2025/05/17 11:44:10時点 楽天市場調べ-詳細)
created by Rinker
¥3,080 (2025/05/16 21:33:30時点 楽天市場調べ-詳細)